スポーツでの
痛みについて
スポーツによるケガは、大きくスポーツ外傷とスポーツ障害に分類されます。スポーツ外傷はスポーツ中に生じた強い外力による組織の損傷のことで、骨折や腱の断裂、靭帯損傷、肉離れといったものがあります。スポーツ障害は同じ動作を繰り返す、いわゆる酷使(オーバーユース)によって起こる障害のことで、疲労骨折、腱や靭帯の炎症、習慣性となった脱臼、関節不安定症などがあります。
スポーツによる主な疾患
野球肘
ボールを繰り返し投げることによって、肘への負荷が過剰になることが原因です。肘の外側では骨同士がぶつかって骨・軟骨が剥がれ、内側では靭帯が引き伸ばされます。投球時や投球後に肘が痛くなり、肘の伸びや曲がりが悪くなります。
スポーツによる膝の慢性障害
長時間繰り返しランニングやジャンプを行うことによって膝に痛みが生じてきます。膝の慢性障害には部位により①大腿四頭筋付着部炎、②膝蓋腱炎、③鵞足炎④腸脛靭帯炎などがあります。
※画像は、日本整形外科スポーツ医学会「スポーツ損傷シリーズ10 膝の慢性障害」より引用
オスグッド病
膝に負担がかかるサッカーやバスケットボールなどのスポーツをし過ぎることで発症します。特に発育期の子供では、膝の周りにある筋肉や腱が成長スピードと合わず、バランスが悪くなり発症しやすいと考えられています。主に膝の下の骨(脛骨粗面)が盛り上がり痛みが出ます。
膝靭帯損傷
スポーツ外傷や交通事故などで大きな外力が膝に加わった際、その力の方向に応じて種々の靭帯損傷が生じます。急性期(受傷2~3週間程度)は膝の痛みと腫れ、可動域制限がみられ、その時期を過ぎると損傷部位によって徐々に膝の不安定感が目立ってきます。
※画像は、日本整形外科スポーツ医学会「スポーツ損傷シリーズ14 膝靭帯損傷」より引用
肉離れ
スポーツによるものが多く、典型的にはふくらはぎの内側(腓腹筋)、太ももの前面(大腿四頭筋)と後面(ハムストリングス)などにみられます。体重をかけると痛むために、通常の歩行が難しくなります。
シンスプリント
下腿疲労性骨折とも呼ばれており、運動時や運動後にすねの内側の中央から下方にかけて痛みがみられます。長距離走やサッカー、バスケットボールなどの走ったりジャンプを繰り返すスポーツに多く、競技を始めたての方に発症しやすい傾向があります。
アキレス腱断裂
踏み込みやダッシュ、ジャンプなどの動作で、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)が急激に収縮した時や伸ばされた時に発生します。腱の老化現象が基盤にあると考えられます。受傷時には強い衝撃を感じることが多く、断裂した音を自覚することもあります。
疲労骨折
疲労骨折とは一回の大きな外傷で起こる通常の骨折とは異なり、骨の同じ部位に繰り返し加わる小さな力によって骨にひびが入ったり、ひびが進んで完全な骨折に至った状態をいいます。スポーツ選手では、短期間に集中的なトレーニングを行った時に生じることが多いです。足の第2中足骨や下腿(脛骨、腓骨)、肋骨、足関節内果、尺骨などに起こり、その部位の疼痛を訴えることがあります。
小児の主な疾患
肘内障
肘の靭帯から肘の外側の骨(橈骨頭)がはずれかかることによって起こります。多くは5歳以下の子供で、手を引っ張られた後などに痛がって腕を下げたまま動かさなくなります。
側弯症
背骨が左右に弯曲した状態で、背骨自体にねじれを伴うこともあります。通常、小児期にみられる脊柱変形を指し、日本での発生頻度は1~2%程度で、女子に多くみられます。原因不明の側弯を特発性側弯症といい、全側弯症の60~70%を占めます。左右の肩の高さの違い、肩甲骨の突出、腰の高さの非対称、胸郭の変形などが生じ、側弯が進行すると腰背部痛や心肺機能の低下をきたすことがあります。
腰椎分離症
多くは体が柔らかい中学生頃に、スポーツなどで腰をそらしたりひねる運動を繰り返し行うことで、腰椎の後方部分に亀裂が入って起こります。症状は腰痛の場合と、殿部や太もも周囲の痛みの場合があります。
股関節炎
小児の股関節炎の中でもっとも多い疾患は単純性股関節炎です。3~10歳の男児に多く、はっきりとした原因は不明です。股関節の痛みで足を地面に着けなかったり、痛みで歩くことができなくなります。痛みは太ももから膝に感じる場合もあります。