リハビリで何を治すことができるのか、今回「変形性股関節症」をご説明致します。
変形性股関節症とは、股関節軟骨のすり減りや骨の変形によって股関節に痛みを引き起こす疾患です。リハビリではこの変形性股関節症に伴う痛みを軽減、改善したり、変形の助長を予防することが期待できます。
<変形性股関節症が起きる原因>
日本では、特に股関節の発育が不完全なことが原因で起こる場合が多いです。
股関節の発育不全による形態異常が、加齢に伴い関節の摩耗を繰り返し変形性股関節症になります。
【変形性股関節症の病期分類】
股関節の変形は図に示したような病期で進行します。
前期:先天的もしくは後天的な骨の変形により、骨がうまくはまらない状態
初期:股関節の間が少し狭くなっている状態
進行期:股関節の間がかなり狭くなっている状態
末期:股関節の間がなくなり、変形が高度に進行している状態
<痛みの原因となる部位>
1.股関節周囲の筋肉(画像例:腸腰筋、外旋筋)
2.股関節周囲の軟部組織(画像例:関節包)
大きく分けるとこの2つが原因で痛みが起きていることが多く、これらが拘縮(柔軟性がなく固まった状態)していたり、動きが悪くなることで痛みを伴い変形を助長します。
前述したような股関節の発育の不完全さでどのような変形をきたすのかによって痛みの部位が変わります。今回は痛みの原因になりやすい部位に焦点を絞ってご説明致します。
<リハビリによる治療>
1.股関節周囲の筋肉
変形性股関節症では、骨の変形によって関節の安定性が乏しくなります。そのため、周囲の筋肉が関節の安定化を図るために過剰に働くことで痛くなります。
図に示した筋肉の中では、前方の腸腰筋、後方の外旋筋が安定性を保つために過剰に働いて痛みを起こしていることがよくみられます。
筋肉が痛みの要因となる場合は大きく分けて二種類の状態になります。
短縮:筋肉が短くなること
癒着:筋肉や筋膜が動きにくくなること
このどちらもが股関節の可動域を制限したり痛みを引き起こす要因となります。
特に筋膜は痛みを感知する受容器が筋肉の10倍存在すると言われており、筋膜の動きが悪くなることで股関節の痛みに大きく影響します。
短縮の治療方法:ストレッチ(短くなった筋肉を長くする治療)
癒着の治療方法:リリース(筋肉、筋膜を動きやすくする治療)
主に上記二つの方法で治療し、筋力トレーニング、理学治療機器などの方法も必要に応じて併用しながら治療を行います。
2.股関節周囲の軟部組織
股関節周囲にある軟部組織が筋同様に癒着や伸張性を失って、動きが悪くなることで軟部組織自体に痛みが出す場合があります。
変形性股関節症では図にある関節包という軟部組織が痛みの原因になることがよくみられます。
特に後方の関節包が拘縮(柔軟性がなく固まった状態)を起こすことで変形した骨同士の衝突が起こります。そのまま慢性的に摩擦が起こると、関節包そのものの損傷や滑膜(関節包の内側の膜)の炎症が起こり痛みを起こします。
この場合も筋肉で説明したようなストレッチを行うことで関節包を伸張させて痛みや関節の制限を軽減、改善することができます。
インソールによる環境設定
靴の中敷きに特殊なパッドで凹凸をつけて足型を補正し足裏を刺激することで今まで使えていなかった筋肉の動きを活性化したり、股関節の荷重位置を足部から補正することで股関節にかかる痛みや負荷を減らします。
当院ではオーダーメイドでその方に合ったインソールを作成しております。
このように変形性股関節症もリハビリによって痛みを軽減、改善したり今後の変形進行を予防することが期待できます。次回は変形性股関節症に対する変形予防としてセルフエクササイズを記載致します。
人によって痛む場所やその原因は異なります。中村整形リハビリテーション科ではその方に合わせた個別治療を行っています。
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執筆:理学療法士 本多 悠一
監修:医師 中村龍之介