前回変形性股関節症についてご説明させて頂きました。変形性股関節症とは、主に股関節の発育不全により、骨の変形や軟骨のすり減りが起こり、痛みを誘発する疾患です。股関節が安定しない為、周囲の筋が過剰に働いてしまい、痛みや可動域制限を来します。股関節に障害が生じると、生活に大きく影響が出ることになる為、股関節にかかる負担の軽減を図ることが大きなポイントとなります。
そこで今回は、前回硬くなりやすい筋として紹介した股関節周囲筋の腸腰筋(図1)・股関節外旋筋(図2)・股関節関節包後面に焦点を当て、ご説明させて頂きます。
それぞれの筋が硬くなる原因は、主に骨盤の位置に関係があります。腸腰筋は股関節の前方に、股関節外旋筋・股関節関節包後面は股関節後面に付着している筋です。骨盤が後傾することにより、腸腰筋は伸張、股関節外旋筋・股関節関節包後面は短縮されます。骨盤が後傾する姿勢は、いわゆる猫背の姿勢です。長時間の不良姿勢(猫背の姿勢)を繰り返すうちに、それぞれの筋が固まり、股関節に負担がかかります。
では、前述した腸腰筋・股関節外旋筋・股関節関節包後面のセルフストレッチ・ケアについてご説明させていただきます。
図1 図2
腸腰筋ストレッチ(図3-1)
図3–1
- 椅子や机に両手をつく。
- 片方の脚を後ろに引く。後ろの足のつま先は真っ直ぐに、後ろに引いた足の付け根を伸ばす。
- 30秒×5回を目安に左右行う。
◎ポイント:背筋をしっかり伸ばしながら行いましょう。
腸腰筋のストレッチ(図3–2)
図3-2
- 膝をかかえ、ももをお腹に近づける。
- 反対側の脚はできるだけ伸ばしたままで行う。
- 30秒×5回を目安に左右行う。
◎ポイント:曲げている脚の反対側の膝が曲がってしまう場合は、膝下にタオルを入れ、タオルを押しつけながら行いましょう。
※腸腰筋のストレッチは、図3-1に比べ図3-2の方が負荷が少ないです。痛みがある方や、ふらついてしまう方は図3-2を行なって下さい。
股関節外旋筋ストレッチ(図4-1、4-2)
図4-1 図4-2
- 両手を90度に開く。
- 片方の脚のくるぶしを、もう片方の脚の膝に乗せる。
- くるぶしを乗せた側の脚を倒し、反対側のお尻を伸ばす。
- 30秒×3回を目安に左右行う。
◎ポイント:赤い矢印の部位がしっかり伸びているのを意識しましょう。
股関節関節包後面のストレッチ(図5-1、5-2)
図5-1 図5-2
- 仰向けになり、両膝を立てる。
- 片方の脚を反対側の脚に乗せる。
- 乗せていない脚を両手で支え、お腹に近づける。
- 30秒×5回を目安に左右行う。
◎ポイント:頭を上げないように気をつけましょう。
上記のセルフストレッチやケアを毎日少しずつ行なって頂くと、股関節周囲の筋緊張の緩和を図れ、股関節にかかる負担を軽減することが可能です。
しかし、変形性股関節症はお一人お一人症状が異なります。上記ストレッチやケアは、痛みのない範囲で行って下さい。痛みが強い場合や、ストレッチを行い痛みが出てしまう場合は中止して下さい。
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執筆:理学療法士 伊藤 陽
監修:医師 中村龍之介